2013年3月30日土曜日

Clinical Problem-Solving の起源と略史

個人的な回想から始めるのを許して頂ければ、ちょうど初期研修が終わりに近づき、診療所所長研修を目前に不安と期待が綯い交ぜになった心理状況の1992年に本シリーズはNEJMでの連載が始まっている。
 しかし、実際には、Jerome P. Kassirer先生らの決断分析に始まる臨床認知の探求は1970年代に端を発している。そして、1978年には、 "Clinical problem solving"なる言葉を使い始めた。NLPの開発と同じようにプロの臨床推理を観察し、当初は、何らかのアルゴリズム化を考えていた節がある。しかし、次第に、その研究過程が、そのまま医学教育に有効なことを見いだしていったようだ。
 以後のCPSとNEJMにまつわる変遷を箇条書きに記しておく。

  • 1985年から1991年まで"Hospital Clinical"誌に78回にわたり連載。
  • 1991年5月、Learning Clinical Reasoning 第一版出版。
  • 1992年1月、NEJM誌に連載開始。
  • 2005年11月3日、NEJM誌、ポッドキャスト配信開始。
  • 2009年9月10日、Interactive Medical Case開始。
  • 2009年9月11日、Learning Clinical Reasoning 第二版出版。NEJMでの連載分の症例を追加し、先輩シリーズに当たるCPCに関する記述も認められる。

 For teaching clinical problem solving, the CPC mode has several disadvantages. First, retrospective bias has a powerful influence on the problem-solving practices of participants. Merely knowing which tests and treatments were selected and which laboratory tests were positive or negative gives major clues to the thinking of the clinicians caring for the patient. Second, the availability of all the data inhibits a clinician from discussing his or her rationale for collecting such data. In addition, a CPC discussant is always looking for "zebras" and often fails to consider the actual prevalence of diseases likely to be encountered.
 Finally, the sequence of materials should be clinically logical. If an expert clinician might immediately order a CT scan of the head of for an alcoholic or AIDS patient with new neurologic findings, there is no need to insert a lot of extraneous clinical material before giving the results of the CT scan. If a good clinician chose to order a serum potassium and thyroid function studies in a young Asian man who presented with muscle weakness, it would be appropriate to present the data in that sequence. Failing to follow the logical sequence of the diagnostic ( or therapeutic ) process may stifle the discussion.

  • 2011年9月14日、クリニカル・リーズニング・ラーニング出版。
  • 2012年4月、NEJM誌iPadアプリリリース。

References
  1. Schwartz WB et al. Decision analysis and clinical judgment. Am J Med. 1973 Oct;55(3):459-72.
  2. Gorry GA et al. Decision analysis as the basis for computer-aided management of acute renal failure. Am J Med. 1973 Oct;55(3):473-84. 
  3. Kassirer JP et al. The principles of clinical decision making: an introduction to decision analysis. Yale J Biol Med. 1976 May; 49(2): 149–164. 
  4. Pauker SG et al. Towards the simulation of clinical cognition. Taking a present illness by computer. Am J Med. 1976 Jun;60(7):981-96. 
  5. Kassirer JP et al. Clinical problem solving: a behavioral analysis. Ann Intern Med. 1978 Aug;89(2):245-55.
  6. Kassirer JP et al. Toward a theory of clinical expertise. Am J Med. 1982 Aug;73(2):251-9. 
  7. Moskowitz AJ, et al. Dealing with uncertainty, risks, and tradeoffs in clinical decisions. A cognitive science approach. Ann Intern Med. 1988 Mar;108(3):435-49.
  8. Jerome P. Kassirer, Clinical Problem-Solving — A New Feature in the Journal. N Engl J Med 1992; 326:60-61
  9. McMahon GT, et al. Interactive medical cases-A new journal features. N Engl J Med. 2009; 361(11): 1113.
  10. Edward W. Campion, et al. The Journal's App for the iPad. N Engl J Med 2012; 366:1342

2013年3月29日金曜日

決断分析 "PRO-ACT-IVE approach"

診断という行為は、患者が持ち寄る健康問題に対して、Timeに任せるか、さらにTestするか、即刻Treatするか、決断の連続のプロセスである。不確実性下で推論をもとに決断する行為、それが診断なのである。
第1ステップ-PROactive:問題と目的
  • P:問題点(Problem)の定義
  • R:さまざまな視点からの再構成(Reframe)
  • O:目的(Objective)の明確化
第2ステップ-proACTive:選択肢,帰結,トレードオフ
  • A:すべての関連する選択肢(Alternatives)の考慮
  • C:帰結(Consequences)のモデル化と可能性(Chances)の推定
  • T:トレードオフ(Trade-offs)の関係にある数値の同定と計算
第3ステップ-proactIVE:統合,価値,解析と評価
  • I:エビデンスと価値の統合(Integrate)
  • V:期待値(Value)の最適化
  • E:前提の検証(Explore)と不確実性の評価(Evaluate)
References

2013年3月24日日曜日

Clinical Problem-Solving のまとめ方

 Clinical Problem-Solvingのポッドキャストのディクテーションが滞っています。オリジナル記事の醍醐味に欠けるので、いまひとつモチベーションが湧かないのです。NEJM誌としては、オリジナル記事を読んでもらってなんぼですから、無料のポッドキャストが一種のティーザー広告となってしまうのは、仕方ないこと。

 そこで、後から役に立つ要約を手間をかけずに作る方法を提案したい。一言で言うと、起承転結に沿ったストーリーを再構成することである。以下に、もう少し詳しく述べる。
  • 起:Presenter's first line、つまり症例呈示の第一文。症例の、年齢、性別、主訴と発症経過などの重要事項が詰まっています。
  • 承:Discussant's first line 、つまり診断推論の第一文。ここから展開されていく過程が一番の醍醐味ではあるのだが、要約に詰め込むには煩雑に過ぎる。第一手だけに割り切ることとする。
  • 転:前の診断仮説と最終診断をつなぐ一文。「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)」で言う「キラーパス」に相当するもの。Commentator's Pearlやタイトルの意味のネタばらしとなっていることが多い。Pearlなだけに、探す一手間も、これまた楽しい。
  • 結:Answer、つまり最終診断。
 計らずも、英語の頭文字の連なりが、PDCAとなった。例として、"Eyes Wide Open"で、このサイクルを廻してみよう。
Eyes Wide Open 
P: Six days after he was found on the floor with altered consciousness, a 51-year-old man went to see his physician.
D: Altered consciousness associated with incontinence and transient confusion is most suggestive of a seizure.
C: The diagnostic evaluation of a stroke differs in younger patients, since the spectrum of causes is wider.
A: Atrial myxoma.
論理の飛躍はあるが、一回全体を読んでいれば、概要を思い出すきっかけになる程度の要約になっていると思う。

 余談だが、"Eyes Wide Open"のタイトルで連想するのは、スタンリー・キューブリックの遺作「アイズ・ワイド・シャット」。原作が、アルトゥール・シュニッツラーの短編「夢小説」であることは有名な話。前者の舞台がニューヨーク、後者はウィーンであること以外、原作に忠実に映画化されている。しかし、背景都市が違うだけで、「やっぱり母ちゃんが一番」という映画と街の爛熟と退廃が人の心理に投影する影を醸しだす小説の差を感じてしまう。コンテキストが認知に与えるバイアスというものを実感する次第。診断推論においても留意しなければならないことである。

2013年3月22日金曜日

日本語で読める"Clinical Problem-Solving"一覧

NEJMのClinical Problem-Solvingのシリーズで日本語で読めるものは、下記3冊、計52編存在する。現在のところ204編がNEJM誌上に発表されているので、1/4が日本語で読めることになる。さわりとしては十分過ぎる分量かもしれない。

  Clinical Problem‐Solving Collection―from The New England Journal of Medicine
Clinical Problem‐Solving Collection―from The New England Journal of Medicine (2)
クリニカル・リーズニング・ラーニング

2013年3月18日月曜日

Courseraのコース、 "Clinical Problem Solving"終了

最終日は、指導者になったときに、5週目までに学んだことを、どのように教えるか?ということが、主題でした。ティーチングケースの作り方やテストの作り方をはじめ、間違いを指摘する場合、正しい答を与えるのではなく、本人に気づかせることなどの話がありました。新たな宿題はなく、ノルマは先週の宿題の相互採点だけで、少し気が楽。

全体を通して、このような講義がなされているアメリカのMedical Schoolと比較すると、日本の医学部の教育は、まだまだ基礎医学偏重だと感じた次第。

今回の講義を通じてPCのディスプレイを見ながら、ノートを取るということをしたが、また他のコースを受講するときのために代替案を挙げてみる。
UniShared:コースメイトのClément Delangueさんが、ビデオを見ながらオンラインでノートをとれて、Google Driveに保存してくれるWebアプリを開発してくれた。
*Split Screen*:ページを分割してくれるChromeアドオンで一方に、ビデオを、もう一方にGoogle Driveを開く。
お気に入りのエディタ:面倒なことをしなくても、ブラウザと同時に、こうすればいいだけの話。
ホワイトボード:ホワイトボード+半透明シートのレイヤーが8ページある製品。レイヤー間に紙を挟んでメモしたり、ホワイトボードに雛形を描いて半透明シートの上から上書きしたり、工夫次第で使い方が広がる一品。
何か、段々とローテクになっている気もするが、人間、それが自然なのかもね。

これで、ノルマから解放されたので、そろそろ本ブログの初心に帰らなければ…

2013年3月13日水曜日

診断エラーと認知バイアスに関する覚え書き

今回は、下記Referenceの本の紹介から入り、その概要とそれらの対策という内容でした。前半部分は、紹介の本を読んでいれば、目新しいことはありません。しかし、言及はしておりませんでしたが、何故、コースのタイトルがNEJMの連載"Clinical Problem-Solving"と同じなのか、納得できる回となっています。
また、紹介されている「ファスト&スロー」は、あの辛口ナシーム・タレブをして「『国富論』や『夢判断』と並ぶ社会思想のランドマーク、21世紀の古典」と言わしめた著作です。翻訳が、Kindle化もされており、一読をお勧めします。コストを考慮すれば、原文のKindle版が格安となっています。
下記に講義要旨のメモを記しておきます。
思考様式とエラー(GEMS: Generic Error Modeling System) 
System 1 Skill based Activity → Slips(Execution Errors: Distraction Errors, Capture Errors) 
                     Rule based Activity → Mistakes (Planning Errors) 
・ System 2 Knowledge based Activity → Mistakes (Planning Errors)
学校時代のテストで言えば、ケアレス・ミスがスリップ、本当の間違いがミステイクということになりましょうか。
認知バイアスの例 
・ Premature Closure(早期閉鎖):他の可能性を早くに除外してしまうこと。 "The most commonly missed fracture is the second one."という言葉があるように、1つ病気を見つけてしまうと、2つ目の病気の可能性を見逃してしまう例など。
・ Availability heuristic(利用可能性ヒューリスティック)思い出しやすいものを起こりやすいものと誤認すること。 "When you hear hoofbeats behind you, don't expect to see a zebra"というあまりにも有名なTheodore Woodward先生の箴言がありますね。
・ Confirmation bias(確証バイアス):ある考えや仮説を評価・検証しようとする際に、多くの情報の中から、その仮説に合致する証拠を選択的に認知したり、判断において重視したりする傾向のこと。仮説に都合の悪い情報は無視されやすい。 
・ Overconfidence effect(過信効果):専門家や自分を過剰に信用することで陥るバイアス。「信じるものは、足を掬われる」ということです。「ファスト&スロー」の著者の記事、 "Don't Blink! The Hazards of Confidence". New York Timesの2011年10月25日号に掲載されています。


認知バイアスのごく一部の紹介なのですが、日常的に陥るバイアスなので、記憶に定着するよう語呂合わせをしておけば、「早利確過(=総理閣下)」、英語では、"PACO"となりましょうか。


エラーやバイアスに対する対策 
チーム医療: メタ認知を駆使してもすべてのバイアスを排除できるわけではない。他人の脳を借りるのが手っ取り早い解決策。 
Problem Mapping: 参考文献が見当たらないのだが、要するに、時系列でinformation bundleのアップデートに対応したworking diagnosisのアップデートを可視化することで、1) Root-Cause Analysisを行う、2) ティーチングケースを準備する、3) 日常診療の振り返りを行う、ということが可能になる。
まさに、上記2)のティーチングケースが、NEJMで連載されているClinical Problem-Solvingなのでした。

References

2013年3月8日金曜日

【本】本の紹介"Clinical Care Conundrums"

NEJMのCPSに倣って、Journal of Hospital Medicine誌でも、"Clinical Care Conundrum"という連載が2006年1月から始まっている。残念ながら、時間が経過しても記事はオープンにならないので、この度、このシリーズがまとめられて本になるのは嬉しいニュースです。Amazonで予約ができるようになっています。Amazonの内容紹介を引用すると、
この本はホスピタリストや入院を担当する医師、関連スタッフ、研修医向けの初めてのエビデンスに基づいた症例集です。各章には、読者自身の診療に役立つよう実践的「パール」の記載があります。Journal of Hospital Medicine誌の人気絶賛連載中のClinical Care Conundrum (CCC)が大幅に改訂され、高品質の画像と本文が追加し、装い新たな本書は、病棟や教室で不可欠な参考書や教科書になる。
とのこと。参考までに、JHM誌のサイトから無料で公開されている3つの回のリンクを 下に挙げておきます。
  • Sanjiv Baxi, James Platts-Mills, Sanket Dhruva, Laurence Huang, Doug Hanks and Gurpreet Dhaliwal, "A double-edged sword", JOURNAL OF HOSPITAL MEDICINE Volume 8, Issue 1, January 2013, Pages: 47–51 
  • Lorenzo Di Francesco, Luis Mora, Kenneth Leeper, Maged Doss, James Little, Martin Sheline, Mark V. Williams and Carlos Franco-Paredes "Short of breath, not short of diagnoses" JOURNAL OF HOSPITAL MEDICINE Volume 4, Issue 1, January 2009, Pages: 60–67
  • Gregory M. Bump, Vikas I. Parekh and Sanjay Saint "Above or below?" JOURNAL OF HOSPITAL MEDICINE Volume 1, Issue 1, January/February 2006, Pages: 36–41
何よりも、本邦の名医、青木眞先生と徳田安春先生、そしてTierney先生のコラボの回も選に漏れず、採用されているのも嬉しい。
  • J Hosp Med. 2009 Apr 22;4(4):262-266. [Epub ahead of print] Caught in the web: e-Diagnosis. Tokuda Y, Aoki M, Kandpal SB, Tierney LM Jr. PMID: 19388072

2013年3月7日木曜日

The Heart of the Matter

A CLINICAL PROBLEM-SOLVING article by Laura Tarter from Stanford University Medical Center, Palo Alto, California.
A 22-year-old woman presented to the emergency department with a 4-week history of cough, progressive shortness of breath, subjective fevers, and malaise. On the day of admission, she was unable to walk farther than one city block without stopping to rest. She noted new swelling in both legs.
The patient reported having arthralgias in her hands and knees that had begun 3 months before admission and were worse in the morning.
The patient was a well-nourished woman who appeared anxious, with mildly increased respiratory effort. She had tachycardia with a regular rhythm, a loud first heart sound, and a normal second heart sound. A grade 2/6 systolic murmur was best heard at the base, and a low-pitched grade 2/4 rumbling diastolic murmur was best heard at the apex. Subtle synovitis was present in four metacarpophalangeal joints and in her left wrist, and she had three, bilaterally distributed subungual splinter hemorrhages.
The patient remained afebrile throughout her hospital stay.
Although SLE was a leading consideration at multiple points in this case, the clinicians and the discussant were repeatedly forced to consider whether additional data supported a diagnosis of SLE and SLE-related phenomena or provided contradictory information that could change the working diagnosis. This cognitive process involved both pattern recognition and analytic reasoning.

2013年3月6日水曜日

診断プロセスの稼業五段活用


CPSのテキストからムーブをもとに文例収集するために診断の過程を明示化してみた。こうやって見ると、診断ってのは、大胆に、といって彫り過ぎずに、造型を写実する彫刻の過程に似ていると感じました。
  1.  仮説生成(inductive reasoning):病因学、病理学、解剖学など様々なレベルの可能性を列挙する。
  2.  棄却:可能性が低くとも、危険な地雷疾患を暫定的に否定しておく。ただ否定しきれない場合は、頭の片隅には常に置いとくべき。
  3.  群:ありそうな順に並べ替えた7±2項目の鑑別診断群を生成、要するに仮説の精製過程。群盲評象に陥らないよう、全体象(像)を意識することが重要で、熟練すると、ゲシュタルト診断(一発診断)が可能になる。
  4.  検定(hypothesis testing, deductive reasoning):key & rejecting featureをもとに三段論法で、確定、除外を行う。絞り切れないときは、対象疾患に詳細な考察を加える。
  5.  拘泥:最終診断に拘りはないか?認知バイアスはないか?特に、慌てていないか?(αエラー、premature closure caused by time pressure)。困難な状況にあるときこそ、振り返りが必要。
References




2013年3月5日火曜日

CPSを成功させる12のコツ

CPS運営面での実際的なコツに関する文献を読んでみました。複数の施設で対抗試合の形で実施すると楽しそう。レビューアーや講評者の公平性を保つためには3つ以上の医療機関が関与する必要がありそうです。北海道ではネット上での運営も考慮する必要がありそうです。
1. Picking the Case: 診断医が広範な鑑別診断や作業仮説の再考が必要になるように、二転三転する経過の症例を選ぶ。
2. Use Artistic License: 最終診断に繋がる本筋とひっかけの情報のバランスが重要で、創作上の特権を行使する。
3. Time Management: 症例は、討論、質疑応答、全体の論評の時間を確保するため、20分〜1時間程度にまとめる。
4. Avoid Premature Closure: 最初のスライドは、“clinical problem solving”と討論参加者の所属、氏名に留め、思考の早期閉鎖を避ける。
5. Start Simple: 症例の最初のスライドは、年齢、性別、主訴、経過を一文にまとめ、簡潔な始まりとする。
6. Present Data as an “Infusion,” not a “Bolus:” スライド2〜4枚で討論を挟み、データは一気に開示せず、徐々に明らかにする。
7. Mind the Gap: 不慮の事故で次の情報が洩れてしまわないように、空白のスライドを所々に挿入し、幕間には十分配慮する。
9. Find a Peer Reviewer: 症例提示をする者は症例の難しさに直面しているので、経験のある第三者の眼でプレゼン内容と構成を見なおしてもらえるようピア・レビューアーを見つける。
10. Keep it Real: データのみを提示し、解釈は付け加えない。症例報告者はポーカーフェイスに徹し、臨場感を創出する。
11. The Postscript: 診断が明らかになった後、オーディエンスは、診断とその思考過程にコメントするべき。CPSでは、診断そのものよりも診断が明らかになる前の過程にこそ価値があるのだから。
12. Increase Interactivity: 症例提示の幕間でオーディエンスが参加者に質問する場を用意し、双方向性を心掛けることで、CPSは効果的で、楽しいものになる。
References

2013年3月4日月曜日

検査特性に関する覚え書き

コーセラでの奇しくもNEJMの連載と同名"Clinical Problem Solving"というコースも4週目で、折り返し地点を過ぎた。今回は、あまり目新しいことはなかった。SnoutとかSpinで覚えるアレについてでした。
  • SPIN: Specificity over 99%, when Positive, rules IN the disease.
  • SNOUT: Sensitivity over 99%, when Negative, rules OUT the disease.
  • In general, good tests are able to move likelihood of diseases up or down one category of priority.
付け加えると、「15%の法則」が有用。
  • LRが>10, <0.1のとき事前確率を±45%上下する。
  • LRが>5, <0.2のとき事前確率を±30%上下する。
  • LRが>2, <0.5のとき事前確率を±15%上下する。
実用上は、概算でOKなのだが、どうしても正確な確率を計算したい向きには、Androidアプリで、Diagnostic Test  Calculatorなるものも存在します。

References

2013年3月3日日曜日

CPS四天王

昨日、CPSを担当した回数につき言及したが、203回目になる2013年2月7日号までの分でトップテンを数えてみた。

  1. Saint S.   57回
  2. Loscalzo J. 23回
  3. Bruce David Levy, MD 17回
  4. Stephen G. Pauker , MD 13回
  5. Richard I. Kopelman, MD 13回, "Learning Clinical Reasoning"の著者のお一人。
  6. Gurpreet Dhaliwal, MD  11回
  7. Joel Thorp Katz, MD   11回
  8. George Edwin Thibault, MD 11回, ジョシア・メーシーJr財団総裁。
  9. Daniel Richard Kaul , MD 10回
  10. Tierney L. 10回
日本でも有名なセイント先生、ダリワル先生、ティアニー先生、日本での知名度は落ちるが、かのハリソン内科学の編集委員のメンバー、ロスカルソ先生あたりが、四天王と言えるかもしれない。

2013年3月2日土曜日

A Hard Diagnosis

今回は、"hard"をギリシア語の"σκληρά"と掛けたタイトルです。(大ヒントです!)ところで、今回は、著者にTierney先生とDhaliwal先生がお名前を連ねております。ちなみに、本連載でのお二人が著者に名を連ねている回数は、Tierney先生が10回、Dhaliwal先生が11回、お二人共著が今回1回のみとなっており、まさしく記念碑的な回と申せましょう。(プレゼンターは、さぞ緊張したろうな!)付け加えれば、Saint先生は57回!
A CLINICAL PROBLEM-SOLVING article by Mary Margaretten from University of California, San Francisco.
A 56-year-old woman presented to the emergency room with a 4-week history of malaise. During that time, her primary physician had ordered basic laboratory studies, which were normal except for a white-cell count of 16,000 per cubic millimeter. She had taken a sulfa antibiotic, but the malaise persisted. For many years, she periodically had an urticarial rash on her arms.
On physical examination, the blood pressure was 160/80 mm Hg. She had bilateral periorbital edema. Her skin had diffuse patchy areas of depigmentation on the arms, chest, neck, face, and scalp that were consistent with vitiligo. The erythrocyte sedimentation rate was 99 mm per hour. The patient's serum serum creatinine level was 8.9 mg per deciliter. It had been 1.0 mg per deciliter 4 weeks earlier.
On hospital day 1, raised, erythematous, pruritic plaques developed on the patient's arms and legs, similar to those in previous episodes. The serum creatinine level rose to 10.7 mg per deciliter.
Features of diseases often unfold over time rather than all at once. The current case highlights how context, rather than simple knowledge, affects our diagnostic insights. The diagnosis was reached through a systematic process of eliminating competing causes of renal failure and interpreting the kidney pathology in light of an autoimmune diathesis and ongoing hypertension. [Original Article]
非特異的な症状に関するコメント

  • Malaise is commonly reported and offers little in the way of a focused differential diagnosis.
既往歴からの考察
  • The history of urticaria, thyroiditis, and vitiligo raises the possibility of other autoimmune disorders such as Addison's disease or diabetes mellitus to explain the fatigue.

2013年3月1日金曜日

A Change of Heart

A CLINICAL PROBLEM-SOLVING article by Thomas Tsai from University of Colorado, Denver.
 A 57-year-old teacher with a history of hypertension presented to an urgent care center with nonradiating chest pressure and light-headedness. Her chest pressure had begun soon after she had arrived at work that morning, when she was physically threatened by a parent of one of her fifth-grade students. Her symptoms improved with rest immediately after the event but then worsened by the end of the day.
 The patient had a history of well-controlled hypertension. She had smoked approximately five cigarettes daily for 30 years, rarely drank alcohol, and reported no illicit-drug use.
On initial evaluation, the patient reported slight chest pressure but was not in acute distress. Her blood pressure was 83/50 mm Hg, her heart rate was 110 beats per minute, and her respiratory rate was 14 breaths per minute. Pulse oximetry revealed an oxygen saturation of 99% while she was breathing 2 liters of oxygen through a nasal cannula. Auscultation of the chest revealed a loud, crescendo systolic murmur.
 Chest pressure may suggest any of several disease processes, ranging from benign conditions to life-threatening emergencies. In the presence of hypotension, the initial evaluation must focus on ruling out the latter.
 This patient's hypotension and tachycardia suggest the early stage of shock and thus warrant urgent diagnostic testing and management.
 In this case, the electrocardiographic findings are consistent with an acute myocardial infarction, but other conditions that are associated with ST-segment elevation and may thus mimic myocardial infarction must also be considered. [Original Article]
鑑別診断の列挙

  • Chest pressure may suggest any of several disease processes, ranging from benign conditions to life-threatening emergencies. In the presence of hypotension, the initial evaluation must focus on ruling out the latter, which include an acute coronary syndrome, aortic dissection, pulmonary embolism, esophageal rupture, and tension pneumothorax.

Key featureの記述

  • Key features of apical ballooning syndrome are the absence of obstructive coronary artery disease in the setting of characteristic “ballooning” of the left ventricle from severe anteroapical akinesis and hypercontractility of the basal segments.
意外と、hypertensionとhypotensionの聴き取りが難しい。