2013年3月13日水曜日

診断エラーと認知バイアスに関する覚え書き

今回は、下記Referenceの本の紹介から入り、その概要とそれらの対策という内容でした。前半部分は、紹介の本を読んでいれば、目新しいことはありません。しかし、言及はしておりませんでしたが、何故、コースのタイトルがNEJMの連載"Clinical Problem-Solving"と同じなのか、納得できる回となっています。
また、紹介されている「ファスト&スロー」は、あの辛口ナシーム・タレブをして「『国富論』や『夢判断』と並ぶ社会思想のランドマーク、21世紀の古典」と言わしめた著作です。翻訳が、Kindle化もされており、一読をお勧めします。コストを考慮すれば、原文のKindle版が格安となっています。
下記に講義要旨のメモを記しておきます。
思考様式とエラー(GEMS: Generic Error Modeling System) 
System 1 Skill based Activity → Slips(Execution Errors: Distraction Errors, Capture Errors) 
                     Rule based Activity → Mistakes (Planning Errors) 
・ System 2 Knowledge based Activity → Mistakes (Planning Errors)
学校時代のテストで言えば、ケアレス・ミスがスリップ、本当の間違いがミステイクということになりましょうか。
認知バイアスの例 
・ Premature Closure(早期閉鎖):他の可能性を早くに除外してしまうこと。 "The most commonly missed fracture is the second one."という言葉があるように、1つ病気を見つけてしまうと、2つ目の病気の可能性を見逃してしまう例など。
・ Availability heuristic(利用可能性ヒューリスティック)思い出しやすいものを起こりやすいものと誤認すること。 "When you hear hoofbeats behind you, don't expect to see a zebra"というあまりにも有名なTheodore Woodward先生の箴言がありますね。
・ Confirmation bias(確証バイアス):ある考えや仮説を評価・検証しようとする際に、多くの情報の中から、その仮説に合致する証拠を選択的に認知したり、判断において重視したりする傾向のこと。仮説に都合の悪い情報は無視されやすい。 
・ Overconfidence effect(過信効果):専門家や自分を過剰に信用することで陥るバイアス。「信じるものは、足を掬われる」ということです。「ファスト&スロー」の著者の記事、 "Don't Blink! The Hazards of Confidence". New York Timesの2011年10月25日号に掲載されています。


認知バイアスのごく一部の紹介なのですが、日常的に陥るバイアスなので、記憶に定着するよう語呂合わせをしておけば、「早利確過(=総理閣下)」、英語では、"PACO"となりましょうか。


エラーやバイアスに対する対策 
チーム医療: メタ認知を駆使してもすべてのバイアスを排除できるわけではない。他人の脳を借りるのが手っ取り早い解決策。 
Problem Mapping: 参考文献が見当たらないのだが、要するに、時系列でinformation bundleのアップデートに対応したworking diagnosisのアップデートを可視化することで、1) Root-Cause Analysisを行う、2) ティーチングケースを準備する、3) 日常診療の振り返りを行う、ということが可能になる。
まさに、上記2)のティーチングケースが、NEJMで連載されているClinical Problem-Solvingなのでした。

References

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