2013年3月24日日曜日

Clinical Problem-Solving のまとめ方

 Clinical Problem-Solvingのポッドキャストのディクテーションが滞っています。オリジナル記事の醍醐味に欠けるので、いまひとつモチベーションが湧かないのです。NEJM誌としては、オリジナル記事を読んでもらってなんぼですから、無料のポッドキャストが一種のティーザー広告となってしまうのは、仕方ないこと。

 そこで、後から役に立つ要約を手間をかけずに作る方法を提案したい。一言で言うと、起承転結に沿ったストーリーを再構成することである。以下に、もう少し詳しく述べる。
  • 起:Presenter's first line、つまり症例呈示の第一文。症例の、年齢、性別、主訴と発症経過などの重要事項が詰まっています。
  • 承:Discussant's first line 、つまり診断推論の第一文。ここから展開されていく過程が一番の醍醐味ではあるのだが、要約に詰め込むには煩雑に過ぎる。第一手だけに割り切ることとする。
  • 転:前の診断仮説と最終診断をつなぐ一文。「ストーリーとしての競争戦略 ―優れた戦略の条件 (Hitotsubashi Business Review Books)」で言う「キラーパス」に相当するもの。Commentator's Pearlやタイトルの意味のネタばらしとなっていることが多い。Pearlなだけに、探す一手間も、これまた楽しい。
  • 結:Answer、つまり最終診断。
 計らずも、英語の頭文字の連なりが、PDCAとなった。例として、"Eyes Wide Open"で、このサイクルを廻してみよう。
Eyes Wide Open 
P: Six days after he was found on the floor with altered consciousness, a 51-year-old man went to see his physician.
D: Altered consciousness associated with incontinence and transient confusion is most suggestive of a seizure.
C: The diagnostic evaluation of a stroke differs in younger patients, since the spectrum of causes is wider.
A: Atrial myxoma.
論理の飛躍はあるが、一回全体を読んでいれば、概要を思い出すきっかけになる程度の要約になっていると思う。

 余談だが、"Eyes Wide Open"のタイトルで連想するのは、スタンリー・キューブリックの遺作「アイズ・ワイド・シャット」。原作が、アルトゥール・シュニッツラーの短編「夢小説」であることは有名な話。前者の舞台がニューヨーク、後者はウィーンであること以外、原作に忠実に映画化されている。しかし、背景都市が違うだけで、「やっぱり母ちゃんが一番」という映画と街の爛熟と退廃が人の心理に投影する影を醸しだす小説の差を感じてしまう。コンテキストが認知に与えるバイアスというものを実感する次第。診断推論においても留意しなければならないことである。

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