2014年3月5日水曜日

臨床推論の6S読解法

最近の投稿の総集編。

Sound
文字のない言語はあるが、聴覚障害者のための手話以外には、音のない言語はない。母国語でさえ、書けない言葉、意味のわからない言葉は多く、発音できない言葉は、少ないだろう。まず、音ありきなのである。音が分からなければ、内言もできない。
特に、専門分野の英語の場合、慣用として使っている音が間違えていることが多い。それを改めること。アクセントの有無で母音の音色が変わるので、アクセントの位置を正確に覚えることが大切である。音のわからない言葉は、黙読の際、マーキングしておいて、あとで確実に発音を調べることである。試しに、下記の単語を正確に発音できるであろうか?
  • gout, dyspnea, ibuprofen, digoxin, mobile, methyl, psoriasis, psychiatry, myeloid, 120/80 mmHg
Subject
右書では、英文の文章をなめらかにつなぐ法則を4つにまとめている。そのなかの1つに「古い情報を前に」というものがある。この原則に従うと、先頭の語でさえ定まっていない不定冠詞や無冠詞の複数で始まる文章は、一般論であることになる。一般論は、暗に後続する主張の前提となっていることが多く、従って後続の文に結果を指示するsignpost wordsを伴うことが多い。
さらに、一般論では、コンテキストを制限するために、"In + 名詞"を先に出す方法も採られることがある。例えば、"In a younger patient with unexplained weight loss, an eating disorder should be considered."(若年患者の体重減少摂食障害考えられるべきである。)と、日本語における二重主語のような構文が少なからず見られる。
しかし、具体的推論においては、登場するActorsは自明なので、定冠詞を伴う名詞や人称代名詞が主語になることが、不定冠詞を伴う主語より圧倒的に多い。さらに、Actorにより得意なActionも決まってくるので、インプットの際は、主語を把握すること、アウトプットの際も、主語を決めることが、極めて重要です。PDCAの4つの領域から何か選べばいいのです。

Patient
The patient: 症候を示すのにhave, be、訴えを示すのにreport、薬歴・既往歴を示すのにtake, receive, undergoなどの動詞が使われる。

Diagnostician
「我思う、故に我あり」ではないが、「思う、考える」ことから始めると、どういうわけか"I think"、"I would consider the possibility of"と、considerの場合は控えめになる傾向があるようです。思うのは勝手、考えるのは意志的だからでしょうか。「希望・提案」も"I would want / like to know whether"など控えめにしますが、「気になる、危惧する」などは自分の問題なので、素直に直接法で"I am concerned / worried about the possibility of"などと表明します。
主語を省略できない英語では、"I"の多用を避けるため、受動態(should be considered / performed / obtained / ruled out等)や非生物主語の使役表現(make me think, lead me to consider等)も使われます。

Clinical Clues
手掛かりで一番多いのは、症候の有無です。これらの手掛かりが、想定される確率をどのように更新するか、新たな仮説を示唆しないかが、動詞に反映されます。それぞれの動詞がどのように蓋然性を更新するかは、事項を参照してください。
  • The absence of - : make - less likely / unlikely, argue against, rule out, suggest, reduce, exclude, be consistent with
  • The presence of - : suggest, raise the probability of, indicate, be suggestive of, be consistent with
疾患を除外するときは、rule out、可能性を除外するときは、excludeを使うことが多いようです。

Assumed Diseases
未分化な"The possibility"は、当然、"should / must be considered"です。具体的な疾患が、仮説となってくれば、診断基準"criteria"を満たす(meet, fulfill)かどうか試験が必要です。さらに、必要条件として、Time courseは矛盾しないか、症状をExplainするか、充分にSimpleな仮説か、Theoryに合うかのTESTをしていくことになります。ここで使われる動詞で多いのは、"explain, account for, meet the criteria"などです。
主語が多様で、まだ十分精査できていません。今後の課題です。

Strength of the Guesstimation
"To cure sometimes, to relieve often, to comfort always."という格言があります。経験からくる蓋然性は、過去の頻度が参照されるので、頻度と蓋然性を示す言葉を一覧にしてみました。
話を聞きながらメモを取る場合などは、蓋然性の高い因果関係の場合は、二重矢印(double arrow)、五分五分程度の場合は普通の矢印、低い場合は破線の矢印(dashed)と表記を決めておくと、メモしやすいでしょう。可能性が下がったときには縦線(vertical bar)を追加すれば、メモ上での確率の更新も容易すくなります。
  • High odds ( >2): always 100%, diagnostic of 98.4%, certain 95%, indicate / indicative of 92.1%, can, almost certain 90%, usually 90%, very likely 85%, in keeping with 82.1%, generally 75%, probable 75%, compatible with 74.3%, suggest / suggestive of 69.8%
  • Even odds (1/2 - 2): often 60%, frequently 60%, likely 60%, raise the possibility of 52.9%, frequent 50%, could 50%, may 50%, occasionally 40%, might 40%
  • Low odds (<1/2): sometimes 30%, possible 25%, rarely 20%, unlikely 15%, remote 10%, improbable 10%, hardly ever 10%, never 0%
Signpost words
上記本の4つの法則のうち、もう1つが「話の道筋に道標を」というものである。これらの道標(signpost)はインプットの際も有用である。下記に見るように、because, since, although, ifなどの従属接続詞(Subordinators)が多いことに注目したい。
  • Addition: also(782), as well as(98), in addition(32), similarly(1)
  • Cause/Reason: because(263), since(242), as a result of(32)
  • Comparison : as compared with(5), in comparison with(3)
  • Condition: if(238), given(217)
  • Contrast : although(299), however(166), despite(46), yet(25), in fact(8), nonetheless(5), instead(5), on the other hand(4), nevertheless(2), conversely(1)
  • Effect/Result : thus(46), therefore(27), thereby(5), hence(3), consequently(2), accordingly(2)
  • Exemplification: such as(559), particularly(146), thus(46), for example(25)
  • Reformulation: rather(92), in other words(1)
  • Summary: hence(3), finally(1), in summary(1), to summarize(1), 
  • Time sequence: after(222), now(126), before(120), at this point(70), at the time(24), at this time(10), subsequently(8),  eventually(4)
  • Transition: as far as; is concerned; as for ; to turn to
Semantic Qualifiers
敢えて訳せば、「意味限定子」。病歴の再構成、BCG流に言えば、論点のクリスタライズに、意味にブレのない索引語を使いましょう、ということらしい。確かに頭もすっきりして仮説生成もしやすくなるし、将来的に世界中の診察室がネットに繋がり、結晶化した病歴と診断が呟かれるようになれば、巨大な症例データベースが自然に構築される。ただ副作用として、ますます英語がMedicaleseとしてロックインされることになるけど。
  • Patient Identity: man, woman, adolescent, young, elderly
  • Onset: sudden, gradual, acute, chronic, abrupt, rapid, subacute, immediate, delayed, spontaneous, new, initial, relapsing, late, early, flare(-up)
  • Course: persistent, intermittent, recurrent, previous, episodic, paroxysmal, prolonged, progressive, indolent, transient, fluctuating,
  • Site: mono-, poly-, intra-, extra-, large, small, local, systemic, unilateral, bilateral, focal, multifocal, proximal, distal, anterior, posterior, constitutional, diffuse
  • Severity: mild, moderate, severe
  • Setting:  exertional, nocturnal, at rest, immunosuppressed, immunocompromised
Speed Reading
当ブログの目的は、NEJMのCPSシリーズを読んで、自分なりの臨床推論を断片的にでも英語で呟けるようになることだ。その為には、速く読めることに越したことはない。禅問答のようだが、速く読めるようになるためには、速く読むことだ。タイムトライアルを繰り返す。同じ素材であれば、自然に速くなるはず。しかし、繰り返しは、飽きる。だから、モチベーションを保つために、時間を測定し、記録する。その数値こそが、インプットの測定可能な指標である。最初は、意味は分からなくとも、気になるところはマークして、あとでぼちぼち調べるようにする。それを繰り返すのだ。ちなみに速度の目安を下に記しておく。
  • 100 wpm センター試験
  • 120 - 30 wpm NEJMのポッドキャスト
  • 150 wpm TOEICレベル
  • 200 wpm ネイティブの話すスピード
  • 300 wpm ネイティブの読むスピード

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